陸軍中将 樋口季一郎の遺訓〜ユダヤ難民と北海道を救った将軍〜
という分厚い本を手にして一気に読了しました。
分厚いんだけど、読み切ってしまう、彼の歯切れのよい意見。そして、何よりあの時代をトップとして生きてきたその生身の証言が、グワングワンと胸に突き刺さります。
教科書に書かれてあった歴史上のあの話の裏側、本当が体験したその本人から聞けるのすから迫力が違います。


北方領土に関する証言
樋口季一郎氏はソ連(当時)に詳しく、ソ連に滞在、諜報活動などをしていたようです。
ですので、終戦の8月15日以降も、「あのソ連が、戦いを本当に止めるだろうか。」と疑い警戒していました。そこで、案の定18日にソ連の攻撃が始まります。そこで有名な占守島の戦いなど一連のソ連との「自衛の戦い」があり、結果、ソ連を退け、日本の北端を守ったのですが、これは後々、ソ連が実はアメリカに「北海道の北半分までをくれ」と言っていたことからもわかるように、実質的に北海道、日本の北端を死守したことになったのです。
それが、今、樋口季一郎氏いわく、孫の教科書を借りてみると、北方領土に日本名がなくロシアの名前で表記されている、ことに憤慨されており、また自身が死守した占守島も日本ではなくなっていることに、遺憾の意を表されています。
私はバックパッカーをしていて、先進国には全く興味がありませんでしが、行きたい場所がまだまだありました。その一つに、北方領土と言われている場所があったのですが、実はそれでも、北方領土の歴史をキチンと勉強していなかったのです。
そんな中、「樋口季一郎の遺訓」を読み、一体北方領土というものは本来どういうものであるのか、というのが、少しわかった気がします。
氏がロシア語、英語そしておそらくドイツ語も堪能で、滞在歴もあり、ロシアというもの、そして、その当時の世界を客観的に捉える力を持っていた本当に頭のいい人物だったことは、読んでいればすぐわかります。
その説得力のある理路整然とした文章が、私を大いに納得、理解させてくれたのです。

時代背景や多民族への理解、それから日本の内情を知る立場だった彼のいわば「証言」は非常に説得力のあるものです。
昔、満州に関する本を読んでいた時に、私が驚愕したのが、その当時の日本人の頭の良さです。超一級のシンクタンクだったんだと思わせる「満鉄調査部」に関する本は、時代を超えた今でも驚愕に値します。

「戦後、日本の頭の良い人達はみんな殺されてしまった。いわば日本は脳死状態になったんですよ。そして、それは今に至ってもそうですね。」とある教授が話されていたのを思い出しました。まさに、あの頃の優秀な人材はみな、消えてしまったんですね。あの優秀な人達が戦争を戦ったのか、と思うとあの頃の戦争が今の日本人が捉える戦争とは全然違ったものだったとわかります。


余談ですが、これだけ頭の良い人達が居て、さらには、天皇を中心とした日本を愛する心を持った人たちが戦っていたんだと思うと、そりゃ、日本は強かっただろうな、と思います。(今の日本では絶対無理です)強かったが故にアングロ・サクソンに目をつけられ、追い込まれ、破綻してしまった。。。
仮死の憲法
「樋口季一郎の遺訓」この本の読みどころは、あの戦争でトップクラスの内情を知る人が書いている、ということだろう。戦後に頭の良い人たちは、消されていき、ほとんど証言がない中、これは貴重である。どうして彼が戦犯にならなかったというと、「ユダヤ難民を救った」将軍であり、戦犯にかけるな、とユダヤ人がアメリカ政府に掛け合ったからだと言われている。
その実情内情を知る人が書く「北方領土」に関する文章は、これが正しい姿だ、とわからせてくれる非常に貴重な文章だ。
そして、もう一つ、この本の読みどころだと思うのは、重要なポジションで戦争を戦った樋口季一郎氏が言及する「憲法」の文章だ。
特にこの分厚い本の最後にある「仮死の憲法」という段は、氏の指摘ひとつひとつが明確で明瞭でまさに、日本人が日本人の手で日本国憲法を書き直さなければならないと痛感させられる。
ただ、私が今思うに、今の日本人にそれができるだろうか?ということである。戦勝国、占領した国アメリカから押し付けられた教科書で育った私達は、はっきり言って間違った、相手に都合の良い歴史を学ばされてきた。歴史だけでなく、今現在も進行形でアメリカの考え方に従属するのが当たり前で思考停止している日本の国民。そういう人が新しい憲法を作れるだろうか?
まずやらなければならないのは、教育の変更。日本国史の学び。そして、それを学んだものによる選挙。そして、選挙を正当なものにするための「スパイ防止法」の制定。これが、憲法改正前のやるべきことだと思う。「スパイ防止法に反対するヤツってつまり、、、」ということである。
安倍さんはそれらを踏まえて国民の素地、国会の整備という土台を作ってから「憲法改正」を訴えなければならかったのではないか。順番が大事である。が、、、、もうそんな時間も日本には残ってないかも知れないけれど。。。

結構分厚い本なので、途中で萎えてしまうかも知れませんが、どうか最後の511ページからの「仮死の憲法」525ページまでの短い段だけは読んでほしいと切に願います。
まとめ
父は鬼籍に入ったのですが、とにかく生前一風変わった人でした。
白黒はっきりしていて、潔い。やましいところが一つもない人間などこの世にいるのだろうか、と疑うが、彼だけは、そういう人でした。
親戚からは「侍」や「武士」と呼ばれていました。(笑)まさに!というあだ名でした。
もう、あんな人とは二度と会えないだろうと思っているのですが、この樋口季一郎氏の本を読み進めるにつけ、「あ!これは私の父と同じ精神の人」と気づきました。
こんな形で父と再開するとは。そして、勝手に樋口季一郎氏を身近に感じてしまいました。
本の表紙は樋口季一郎氏の顔写真のアップですが、その目、その佇まいが本当に父と似ています。

